2021.8.30
【幸せな犬生】見た目だけで犬種を選ぶ危険性
犬ほど動物としての同一のカテゴリーの中で、大きさや形状が違う生物は、おそらくいないと思います。
成犬になっても片手で容易に抱きかかえられるチワワから始まり、雪山救助犬で活躍する巨大なセントバーナードまで、世界には数百種類といわれる様々な犬種が存在しています。
これほどまでに多種多様に変化したのは、ヒトが自分たちの目的、大きく分けると「自分たちの仕事の手助けをしてくれる作業犬種」「日常に安らぎを与えてくれる愛玩犬種」の2つを、時間をかけて特徴が顕著になるように人間が交配して創り出した動物だからです。
特に作業犬種は、犬が本来もつ「追及本能」や「狩猟本能」など(例:猟銃で撃ち落とした鳥を拾って持ってくる)を強化、他の犬種であれば習得が容易でない動作であっても、簡単にできる特性をもっています。その作業が生まれながらに大好きな犬種というわけで、ワーカホリック的傾向があります。
このことは、狩猟などしない一般家庭で、その犬種を飼ううえでどういう問題を引き起こす可能性があるか、飼うまえによく考えてみる必要があります。
また愛玩犬種だからといって、運動が必要でないとはいえません。
もともとは犬も野生動物である狼でヒトに親和性がある個体を家畜化していったからです。
例えばトイプードルも愛玩犬種ですが、鳥漁犬であるスタンダードプードルを小型犬と掛け合わせて、小さなサイズにしていったわけですし、野犬になればどの犬も自分で捕食活動をしなければ生きていけないわけですから、食欲からくる運動欲求(獲物を追いかけ捕らえるなど)はどの犬も差こそあれ、必ずあります。
例えばボーダーコリーは、一日に長い時間を広大な平野で羊を追いかけることが可能な身体能力と頭脳をもっています。日本の都会、狭小な住宅環境で飼育する場合、十分な運動などの活動をさせない場合、犬はストレスをためて、問題行動になることは少なくありません。
牧羊の代替として、アクテビティやドッグスポーツ、たとえばフリスビーとかアジリティーとか単に走る、散歩する以上の活動がないと、相当のストレスになり、低くない確率で問題行動(吠える、散歩のときに制御不能、室内で過剰に走り回る、噛む)が発生します。
日本人は農耕民族で、牧羊で有名なニュージーランドのように犬と仕事をするという日常環境がなかったせいもあり、犬を「動くヌイグルミ」のように考えている方がいます。
ヒトと暮らすことに幸せを感じられない犬が、家族に安らぎを届けられるのか?
この質問に関する回答は想像していただければ、自明だと思います。